2026年7月5日日曜日

魔女の1ダース

『魔女の1ダース』(新潮文庫、2000年)

 5月の投稿で『不実な美女か貞淑な醜女か』(注)を紹介した米原万里に、『魔女の1ダース』という本がある。

 プロローグは、米原万里がモスクワで「魔女使い」の集会への出席を誘われるところから始まっている。
 そこで「魔女使い」からプレゼントされたという『悪魔と魔女の辞典』が面白いので、下記に引用する。
  • 愛:相手から無料で利益を引き出すのに、相手が対価以上のものをこちらから獲得したと錯覚し、トクしたと思わせるための呪文の一種。ただし、呪文を唱える当人のほうが錯覚し、自分のほうが損をしていると思いこむ場合も多い。「無償の愛」などとわざわざ定語をつけたりすることがあるように、本来は有償なものと考えられている。
  • 希望:絶望を味わうための必需品
  • 思いやり:弱者に対しては示さず、強者に対して示す恭順の印
  • 謙遜:自慢したいことを他人に言わせるための一種の方法
 中学生の頃に読んだことのあるA・ビアスの『悪魔の辞典』(1911年)を、思わず思い出してしまった。

 辞書で、「ダース」は「13個1組をさす」と説明されているらしい。魔女の世界では1ダースは13本なのだ。
 ロシア語同時通訳として世界各地で活躍した米原万里ならではの、洒落の効いたエッセイが詰まっている。
 エピローグに書かれた恩師の「異文化の交差する瞬間にこそ意味は生まれる」という言葉が全てを物語る。

 こんな面白い本はいろんな人に読んで欲しい。この本もまちライブラリー(注)に寄贈することにしよう。

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