2025年6月25日水曜日

永遠の嘘をついてくれ

 
『永遠の噓をついてくれ』youtubeより

 嘘にまつわる歌はたくさんある。端的に『うそ』というタイトルの曲もある。現在は日本維新の会所属の参議院議員となった中条きよしが1974年1月に発売したヒット曲である。
 「折れた煙草のすいがらで あなたの嘘がわかるのよ」で始まる演歌は、イケメンの中条きよしが女性の立場に立って歌うという設定が受けたのか、巷によく流れていた。 
 冷静に考えると、口紅が付いたすいがらが残っていたのならともかく、「折れた煙草のすいがら」だけで浮気を疑われていたら、世の中のお父さんはたまったものではない。


 松任谷由実の『最後の嘘』もよくできた曲である。「Tell a lie 最期だけ本当の嘘をついてよ 君が嫌いになったって」というサビの部分は、シンプルなメロディに乗って心に響く。
 「本当の嘘」というアイロニックな表現は、別れたくないのに別れなければならないという矛盾した状況にマッチして、一度聴いたら忘れられない。
 昭和を代表する女性のシンガーソングライターとして間違いなく三本の指に入る荒井由実(結婚後は松任谷由美) は本当に上手いと思う。


 最後に挙げるのは、タイトルになっている吉田拓郎の『永遠の嘘をついてくれ』である。ここでいう「永遠の嘘」とは、嘘を付いても一生付き通せば大丈夫といった世俗的なものではもちろんない。
 ニューヨークにいるはずの友が上海の裏街で病んでいると伝え聞いて、「永遠の嘘をついてくれ いつまでもたねあかしをしないでくれ」と歌っている。
 字余りのある歌詞は吉田拓郎の得意とするところであり、吉田拓郎の作詞作曲だと長い間思っていた。

 吉田拓郎は作詞作曲だけでなく、歌うのも上手い。そんなに声がいいとは思わないが、淡々と歌うのを聴いているとさすがにシンガーソングライターだと思う。
 他の歌手が歌っても上手いが、本人には適わない。『襟裳岬』は吉田拓郎の作曲であり、森進一の独特な声が曲に沁みついているが、拓郎が歌う方が私は好きである。
 襟裳岬で元気を取り戻した人は苫小牧から仙台行きフェリーに乗る。その時の歌が『落陽』であり、二つの歌は繋がっていると思う。

 しかし、ユーチューブを見ていて、この曲が中島みゆきの作詞作曲であることを知った。吉田拓郎のライブで『永遠の嘘をついてくれ』の途中でゲストが呼ばれる。
 そのゲストが中島みゆきで、彼女はそのままセカンド・コーラスを歌い始める。これが実に上手い。あの男性的な声で自分の曲にしてしまう。吉田拓郎もお手上げである。
 吉田拓郎がかつてのように曲が作れなくて苦しんでいることを耳にした中島みゆきが吉田拓郎に提供した曲だそうで、よく聴くとやっぱり中島みゆきの曲だと思う。

 中島みゆきが荒井由実と並んで昭和を代表する女性のシンガーソングライターであることについては異論がない。問題は三人目であるが、人によって異なるだろう。
 それはさておき、この歌のモチーフである「永遠の嘘」の是非について、皆さんどのようにお考えになるだろう。
 方便的なものを除き、一旦嘘を付いたら謝らない限りそれを突き通すしかあるまい。そう考えるとやはり嘘は付かない方がいいと私は思う。
 

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